りゅうおう の お しごと 12。 「りゅうおうのおしごと!」12巻感想1~プロ棋士になれたのは誰?~

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りゅうおう の お しごと 12

本記事は将棋の名作である 『』の魅力を、ネタバレ含む感想を交えて全力でオススメするレビュー記事となります。 編のクライマックス。 を争う命を賭けたキャターたちに心が震える12巻目となります。 本作の概要 あらすじ(ストーリー) 編が佳境なので11巻から引き続きメインヒロインであるの弟子たちの出番は少なく、表紙からお察しの通り空銀子にかなりのスポットが当たった内容になっています。 とはいえ、描かれているのは表紙の初々しいバルっぽいエピソードではなく、最後まで気の抜けない編のクライマックスとなります。 そういうわけで空銀子一色に染まった内容というよりは、むしろでしのぎを削って戦う空銀子の対戦相手達を深く掘り下げていった内容という印象ですね。 即ちメインキャター以外にスポットが当たっているシーンが多めなのですが、それでも退屈するような部分は一切なくて、むしろメインキャターに頼らずともここまで高クオリティの作品になっているのはさすがの一言です。 あとの無い年長者である鏡州飛馬。 盤外戦術に長けているけど実は・・な辛香将司。 空銀子に負けて自身の才能に疑問を持つ椚創多。 そして将棋の星の王子様に追い付きたい空銀子。 読んでいて、最後にはその誰もに昇段してほしいと思わされるほど感情移入させられますが、そういうわけにもいかない厳しい勝負の世界が描かれています。 しかし、散々波乱を起こしまくる展開になっているのに、その結果に後味の悪い部分が無いのが素晴らしいですね。 また、見所は編だけではありません。 その裏(というか本来的にはこちらが表なのでしょうけど)では九頭竜八一が二冠を賭けて於鬼頭曜帝位に挑んでいて、主人公としての存在感を遺憾なく発揮しています。 また、あとがき後のでは以前より伏線の貼られていた「九頭竜八一が関東でなんと呼ばれているのか?」という答えが出てきます。 そして、将棋だけではなく恋愛面での勝負 ? にも進展があります。 八一と銀子の関係性は随分と順調のようですが、そのことを一番弟子に伝えられずにいる八一。 そのことを察している様子ではあるものの同時に避けている節のある雛鶴あい。 そういうわけで12巻でのメインヒロインさんは大人しかったですが、代わりに二番弟子の夜叉神天衣が強制を敢行します。 (笑) 小さなヒロインたちに巻き返しはあるのか? その辺も今後の見所のひとつになってくるかもしれませんね。 ピックアップキャター 空銀子一色だった11巻とは打って変わって、12巻では非常に数多くのキャターにスポットが当てられています。 これまでの編の対局では、どうしてもメインキャターの一人である空銀子に感情移入してしまいがちでしたが、人生を賭けて戦うの編のクライマックスにふさわしく他のキャターの視点でも深堀りして描かれていることで、12巻ではどのキャターにも感情移入できてしまいました。 なので、12巻のレビューではここで特定のキャターをピックアップしたりはしませんが、要はそれだけ濃密に脇役すらも描かれているということであって、それがこの1冊の最大の魅力なのではないかとも思います。 それにしても、雛鶴あいのような子供がメインヒロインだったり、時には清滝鋼介のようなおじさんがメインを張ったり、そして12巻のように多種多様なキャターが活躍したり・・ それでいて全く違和感なく 『』らしさを崩さない作品。 将棋というゲームがそれだけ多くの人に愛されるものだからこそ、それに触れるキャターを選ばないということなのかもしれませんね。 ネタバレ含む感想 の練習がしたい ええ。 一晩考えられるアドバンテージは大きすぎます。 敢えてやるなら一日目は定分で止めるしかないでしょうね…… 帝位戦の1局目は、二日目が始まって僅か15手で終わってしまいます。 そして、その理由は八一がした後の一晩を使って局面を読み切ったからなのですが、本当にそれが可能なら確かにというシステムの使い方は勝敗に直結してきます。 まあ、それが勝敗に直結するほどの実力者であればという前提は当然あるのでしょうけど。 それにしても、八一が最後に読みを入れる瞬間が、さながら雛鶴あいが終盤力を発揮する時の姿に重なるのも良かったですね。 そんな感じで5巻の以降、努力や苦労を重ねつつも常に強くなっていっている印象のある八一ですが、そんな八一が関東のから恐れを込めて何とか呼ばれているらしいことが以前から伏線として貼られていましたが、それが12巻ので明らかになります。 それは、 西の魔王。 少し安直な気もしますが、名人が神なのでが魔王というのは発想としては面白いですね。 それに、こういうのは安直な方が分かりやすくて良い意味もありそうです。 もし、あいつの視点で書かれた物語なんてものがあったら、それはきっと……どんな壁でも努力で越えられるとかいう、さぞ希望に満ち溢れたお話なんでしょうね。 でも書いてる本人は気付いてないんだ。 一番高い壁が自分自身だってことに。 最高の喜劇ですよ。 最高に残酷な これは、まさに 『』という作品そのものを示したセリフなのだと思いますが、なるほど本作品には九頭竜八一を主人公とした視点とは別に、九頭竜八一をラスボスとした作品の一面もあるのだと言っているような気もしますね。 例えば、空銀子はまさしく八一に追い付こうとしているのが動機のキャターの筆頭ですし、もしかしたら作者の白鳥先生は 『』のクライマックスを他のメインキャターの誰かによる九頭竜八一への勝利にしようとしているのかもしれないと僕は推測します。 の終盤戦 この辺、あまりにも多くが描かれていて見所が多すぎるので、各キャターについて一言ずつコメントしていきたいと思います。 空銀子 11巻で立ち直りはしたものの、既に喫した黒星が消えるわけではないので常にギリギリの戦い強いられることになります。 やはり勝った方がプロとなる最。 しかも相手はずっとお世話になっている鏡州飛馬という戦う前から精神的にツライ相手の対局が見所となります。 完治しているとはいえ不安は拭えない心臓を抱えて、それをも自分自身で叱咤しながら戦う姿が熱いです。 最後の決め手に雛ら出されたの問題が役立つという奇跡的な展開も素敵ですが、そういえば何だか12巻では空銀子と雛鶴あいの絡みがかなり多かったですよね。 もともと相性の良くないキャター同士が良好になっていく展開が個人的には好きなので、この二人の関係性がどうなっていくのかって個人的にはかなり気になるポイントだったりします。 それにしても、空銀子の対局シーンは二面的なところがあって興味深いです。 女流棋戦にとして君臨する風格のある姿と、歯を食いしばって将棋星人に追い付こうとする挑戦者としての姿。 本作品の序盤では前者の姿が主に描かれていたので、この編では空銀子というキャターへの印象が随分と変わったような気がします。 あと、本編ではに臨む凛々しい姿が主に描かれていて、11巻のラの続きは控えめな印象でしたが、限定版の小冊子がそんな不足を補う内容になっているので、空銀子ファンなら限定版の方をオススメします。 椚創多 天才とは何故天才なのか? そんなことを12巻の椚創多からは考えさせられますよね。 空銀子や辛香将司は天才ではありませんが、天才であるはずの椚創多はその二人に敗れてしまっています。 自分は本当にまだ天才なのかと悩む姿も見られたり、いくら将棋が強くてもまだ小学生なのだろうと思わされるメンタルの弱さが露呈してきます。 もともと才能の無い相手にはハッキリそう言って挑発する小生意気なキャターでしたが、どうやらそんな態度には天才である自分に本気になってくれない相手を本気にさせたい意図があったらしいことが分かったり、そこそこ古株のキャターのわりに実はその内面まであまり触れられていなかったのだということがこの12巻で分かりました。 鏡州飛馬との対局では勝利してしまうことすら躊躇ってしまったり、新たな一面が見えたりして良い意味で印象の変わったキャターだと思います。 また、以前から何故かやたらと八一に懐いていた理由も明らかになっています。 坂梨澄人 女性の三段に初めて負けた三段になってしまい、それを引きずって連敗をしていたキャターです。 の序盤で人目もはばからず泣いている姿が描かれていたのが印象的で、まさか3人目の昇段者になるとは思いませんでした。 最初に連敗したことで他の三段からの警戒が薄れ、精神的にも開き直ったのか連勝を続けたことが結果に繋がったわけですが、本人も自分が合格したことを知らずを去ろうとしているところに昇段の連絡があったとしても、ちょっと想像しにくい感情になってしまいそうですよね。 鏡州飛馬 椚創多が空銀子に敗れて以降ずっとトップを保ってきたにも関わらず、最後は椚創多と空銀子に連敗して昇段には至りませんでした。 ・・と、これだけ書くと単なる敗北者でしかありませんが、椚創多と同じくこちらも随分と好感度を上げてきたキャターなのではないかと思います。 特に、椚創多との対局のラストは良かったですね。 周囲の誰もが鏡州飛馬の勝ちで、椚創多が投了を躊躇っていると認識していたシーンで、ただ一人実は椚創多が躊躇っているのは投了ではなく、詰みがあるのにそれが鏡州飛馬の首を斬ることに繋がると感じて躊躇っているのだと気付いて、それを指すように促したシーンは素敵でしたね。 椚創多も鏡州飛馬も本作品においては名前のある脇役くらいのキャターですが、このシーンにおいては完全に主人公になっていました。 清滝鋼介が鏡州飛馬に託したネクタイ。 それを鏡州飛馬の意思を継いでプロになると宣言した椚創多に託していく展開も良かったと思います。 辛香将司 番外戦術ばかりであまり良い印象のないキャターでしたが、こちらも意外な過去が明らかになって随分と印象が変わってきました。 というか、空銀子は当初から辛香将司のことを相当苦手に感じている様子でしたが、それが苦手でなくなった理由が素敵すぎる。 なぜか空銀子の病気のことを知っていて、しかも明石先生からリークされたわけでもないらく、本当に完治しているのかと脅してくる自分の二倍以上の年齢の中年男性。 言葉にすると女子高生たら怖すぎるキャターですが、考えてみれば明石先生の同期なのだから単に昔から空銀子のことを知っていた可能性はあったわけですね。 実は、空銀子こそが辛香将司が一度やめた将棋の世界に戻ってきた理由だったりするのです。 辛香将司は病院で子供たちに将棋を教えていて、その中に幼い空銀子もいたようなのですが、そんな辛香将司を慕って将棋を指す子供たちは次々と亡くなっていってしまいます。 そのことをツラいと感じていた辛香将司は、しかし空銀子のように元気に今でも将棋を指している姿を見て再び再起する決心をしたわけなのですね。 そんな背景を知ると、不気味で悪質に見えたキャターが一気に違うものに見えてくるから不思議です。 また、何かと悪ぶった言動の中に実は空銀子への気遣いが含まれていたというのも衝撃です。 しかし、その悪意のない本質を空銀子に知られてしまったことで敗北してしまったのは少々皮肉かもしれませんね。 私は強くなった。 もう『かわいそう』な私じゃない。 全身から闘志を剝き出しにして。 「だから! つべこべ言わずに本気でかかってこいッ!! 辛香ッッ!! 対局中の空銀子と辛香将司の会話は、とても温かい気持ちになれる素敵なものだったと思います。 空銀子の感謝 前述しましたが12巻では空銀子と雛鶴あいの絡みが今までより少し多めです。 いや、メインキャター同士にしては今までが少なすぎたのかもしれませんけど。 小童と見くびるようなことを言ってはいても、どうやらしっかり八一と同じ将棋星人の枠に雛鶴あいを入れているらしいことが12巻では分かります。 将棋星人の中でも破格の翼(さいのう)を持つあいつら 鏡州飛馬との対局の中で、なかなか打開できない局面を前に考えるとは、どうやら八一と椚創多と雛鶴あいのことのようです。 小童にお礼、言わなきゃ…… もちろん、確かに雛鶴あいは負けず嫌いを発揮して空銀子にを渡しただけのことでしたが、それでもそれが起こした奇跡であることには違いありません。 雛鶴あい以外にも、月夜見坂燎に室を使わせてもらったことに感謝の言葉を示したり、ある意味では今までの空銀子っぽくないセリフも12巻には多いです。 どちらかといえば、本当は感謝をしていたとしても照れ隠しにツンとした態度をしてしまうタイプのキャターですからね。 逆に言えば、このを乗り切ったということは、そんな照れを遥かに凌駕するくらいの喜びがあるということの裏返しなのではないかと感じました。 俗っぽい言葉を使えば空銀子が色々なキャターに対してデレたということなのかもしれませんけど、その状況が最高すぎると思います。 シリーズ関連記事リンク.

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りゅうおう の お しごと 12

作品内容 奨励会三段リーグ。 四段(プロ)になれる者は2人だけという苛酷な戦場。 そこに史上初めて女性として参戦した銀子は、八一と交わした約束を胸に封じ、孤独な戦いを続けていた。 八一もまた、新たなタイトルを目指し最強の敵と対峙する。 そんな2人を複雑な思いで見守るあいと、動き出す天衣。 そして立ちはだかる奨励会員(なかま)たち。 「プロになるなんて、そんな約束をすることはできない。 それが将棋の世界で生きるということ。 銀子が、創多が、鏡洲が……純粋なる者たちの熱き死闘に幕が下りる。 Posted by ブクログ 2020年02月22日 「もし、あいつの視点で書かれた物語なんてものがあったら、それはきっと……どんな壁でも努力で越えられるとかいう、さぞ希望に満ち溢れたお話なんでしょうね。 」 天才と凡人の物語、りゅうおうのおしごと、もう12冊目。 今回は八一が帝位挑戦のタイトル戦第1戦目と、並行して銀子がプロになれるかどうかの三段リー グ最終盤。 凡人側が熱い一冊でした(凡人といっても世間一般基準では天才の集団だけど)。 それぞれの対局がクライマックスになるたびに、読んでいるほうも息苦しくなるような、圧力を感じる将棋小説です。 ライトノベルとしてはなかなかに登場人物の多い本作、それぞれに人生を賭けた将棋への情熱があり、勝ったも負けたも結果に至るまでの長い長いバックグラウンドを抱えていて、物語的重さを感じます。 そしてこういうのを読むといつも、太刀川さん(ワールドトリガー)の台詞を思い出します。 曰く「気持ちの強さで勝負が決まるって言っちまったら、じゃあ負けた方の気持ちはショボかったのかって話になるだろ」と。 しばらく小学生たちが脇役だったので、この後は出番が多くなるのかな。 フィクションを全て真に受けるわけではありませんが、将棋の世界はずいぶんと「ソフト」の影響を受けている様子。 コンピュータに敵わなくなったら衰退するのかとも思っていたけど、そうなっても人間同士の戦いは続いていくし、かといってソフトウェアを無視するわけでもないというのは面白いことです。 観戦側が逐一ソフトの評価値を見ながら有利不利を論じたりするのとか。

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りゅうおう の お しごと 12

奨励会編のクライマックスではあるけれど、いまいち熱量不足。 病人に無茶をさせればいいというもんじゃない。 竜王の帝位戦も、何か「竜王は人間じゃないくらいスゲー」で片付いてしまう感じで、そろそろネタ切れ感が見えています。 面白いことは間違いなく面白いのですが。 というわけで、そろそろ「のうりん」の続きが読みたいと思ってたところですが、 「あとがきに代えて」で本作以前の作品を「流行の二番煎じ以下のもの」と自分で斬って捨てちゃってます。 のうりん、ものすごく面白いんだけどなぁ・・・間違いなく傑作だと思うんですけれどね。 6巻以降の本作よりも、のうりんの方が勢いがあったと思うのですが。 作者がそんな認識なら、もう続きは出ないっぽいなぁ。 この巻も読者の心を揺さぶる素晴らしい作品でした。 昨今のライトノベルでこれほどの熱量を持った作品は希少だと思います。 ただ、本巻において著者ご自身が過去の自作を貶める発言をされたこと。 もちろん本作が著者の作品で最も素晴らしい作品であることに異論はありません。 著者ご自身の並々ならぬ努力と成長の結晶でしょう。 しかし、著者の商業作品を発売当時から全て購入し、その全てに思い入れのある身としては非常に残念と言わざるをえません。 また、それらの作品の完成に尽力、協力された関係者にとっても残念な発言ではないでしょうか。 きっと著者は将棋以外を切り捨てて前へ進む棋士たちのように、私のような古い読者を切り捨てて更に前へと進まれるのでしょう。 著者の情熱、プロ意識に疑いはありませんが、古い読者のわがままとして、今一度、ご自身のこれまでの歩みとその意味についてご一考いただければ幸いに思います。 相変わらずAmazonレビューの場で暴論ばかり吐かせて頂いている訳だが、今回も相変わらず暴論を吐く事にする。 雛鶴あいは本作に置いて邪魔以外の何物でも無いのでトラックで轢くなりなんなりして放逐してしまうべきでは? ……うん、本作ファンの皆さんから冷たい視線が送られてくるのが感じられる様で結構。 けど、意見を変えるつもりは無いし、なんならJS研も基本的には不要なのでそろそろご退場頂いても良いかと思ってる。 幼女キャラなんて天衣だけで十分というのが正直な所。 さて、今回は6巻以降続いていた姉弟子・銀子の挑む三段リーグを描いたセカンドシリーズの完結編、前巻と前後編の関係にある「後編」となるわけだ。 ただ、このセカンドシリーズは銀子にスポットライトを当てているとはいえより大きく見れば将棋というゲームに人生丸ごと振り回されている群像を描くシリーズだったと思っている。 個人的には主人公の八一や雛鶴あいが異能を発揮していた5巻までのファーストシリーズより余程こちらの方が趣味に合っている。 超人的な才能の持ち主が見せる無双ぶりを描く展開よりも限られた才能しか持たない凡人がそれでもなお己の夢にしがみ付き打ちのめされながらも必死で前に進む方が余程「人間」という物を見せて貰っているという気がする。 それは清滝師匠が老骨に鞭を打ちながら奮戦する姿に大いに唸らされた7巻でも感じさせられた事でもあるし、亡き両親への誓いを胸に闘志を燃やしながらも銀子に敗れ去った天衣も見せてくれたし、何よりこのシリーズの実質的主人公である銀子の「将棋星人の星を目指す地球人」としての苦悩が何より示している。 そしてこの三段リーグというまさに「生死を賭けた生き残りの場」においてはその殺し合いに挑む全ての奨励会三段メンバー全員が「人間という物」を余さず見せてくれる大変に見ごたえのあるシリーズになっていたと言える。 その三段リーグの終盤を描いた本作は間違いなく昇格という「生死」を前に清濁併せた存在である「人間」がこれでもかとばかりに描かれていた。 銀子や年齢制限ギリギリの鏡洲はもとより、人間コンピューターみたいな椚創多が陥っていたどうしようもない孤独、そして何より辛香である。 このピエロの仮面を顔に張り付けたセカンドシーズン最大の「悪役」こそが誰よりも人間臭かった。 後書きで白鳥士郎が大学院まで進んでなお弁護士になれず、三十路を迎えて職歴真っ白という絶望感に打ちのめされたと語っていたが、年齢制限で奨励会を退会させられプロの道を一度は断たれた辛香というキャラクターは作者が情念を思い切り注ぎ込んで産み出した存在だと言わざるを得ない。 作中で三段リーグの同期であった生石を相手に退会後の自分の人生をピエロの仮面を張り付けたまま語り生石を絶句させる辛香の姿はこの巻最大の見所であった。 その辛香をして「将棋に関わる仕事は二番目に辛かった」と言わせた「一番辛い仕事」の中で出会った僅かな希望と再会する場面、将棋を捨てた筈の辛香に再び駒を握らせた相手と相対する場面など最高に盛り上がる可能性を秘めていた……秘めていたのだけどここがちょっと不満。 本来であればセカンドシリーズ開幕の6巻で退会駒という番外戦術を用いてメンタルがお豆腐な銀子を退けた対辛香のリベンジマッチ。 この一戦こそがこの巻のクライマックスになり得た筈であるのに酷くあっさりと描かれておりどうにも物足りなさが残った。 ピエロの仮面を被った極悪人……という仮面を剥ぎ取り、奨励会退会後辛香という人間がどんな人生を送って来たか、そしてその数奇な人生の果てに巡り合った奇跡を相手にどう振る舞ったかを描くのに僅か10頁というのは余りにも短い。 この短さが最近のライトノベルファンの「悪役が大手を振って歩いている姿を見るのは耐えられない」という根性の無さから来る商業的要請からなのか、それとも自身の情念を注ぎ込んで創り上げた辛香というキャラクターに作者である白鳥士郎が向き合うのが辛くなってしまったからなのか、それは分からない。 ただ、これだけは言える。 セカンドシリーズ最大の見せ場となるべき銀子vs辛香という一戦はもっと徹底的に泥臭く「人間と人間のナマのぶつかり合い」が描かれてしかるべきだったし、それは徹底すればこのセカンドシリーズの集大成となり得たとも思う。 人間というのは綺麗なばかりじゃないし、時には心の弱さからひどく醜い所も見せてしまうという部分を徹底して描いてきたからこそこのセカンドシリーズは大いに盛り上がったし、その象徴である辛香というキャラは鏡洲や椚創多以上に掘り下げられてしかるべき登場人物だったんじゃないだろうか? ……で、そのもっと描かれるべきだった辛香の代わりに余計なページを使っているのが雛鶴あいとJS研である。 前巻で八一と銀子が相思相愛の関係である事が示されたのだけど、そうなると八一相手に「師匠、師匠」と迫ってくる雛鶴あいは最早脈も無いのに無駄な好意だけを押し付けてくるお邪魔虫キャラにしかなり得ない。 話を発展させる要素にすらならない、要はラブコメ的展開において無駄キャラなのである。 銀子相手に敗れてなおライバル意識を滾らせ、八一への執念を隠そうともしない天衣の姿と比較すると余計にその印象は強くなる。 それでは将棋指しとしての雛鶴あいはどうか?これがまた使い道がひどく限られてくる。 確かに今回銀子の窮地を救うヒントに繋がる展開に関わってきたり、於鬼頭帝位を相手にギリギリの戦いを強いられながらも逆転の一手を見出した八一の守護天使みたいな描かれ方をされていたのだが……これがどうにも扱いに困った白鳥士郎があいの使い方として無理やりに捻り出したようにしか思えない。 「封じ手」という前巻で用いたモチーフを活かす形で八一が見せた「ハチワンダイバー」並みの将棋盤への深い深いダイブに雛鶴あいを絡ませる必要があるとはとても思えない。 雛鶴あいが異常と言って良い才能を持つ描写は繰り返し描かれてきたのだけど、それが行き過ぎてしまった結果下手に対局シーンを描く事が出来なくなってしまっているのではないだろうか?将棋に振り回され、自分の限られた才能に打ちのめされる「凡庸な将棋指し」たちを軸としてきたセカンドシーズンのリアリティのレベルを根こそぎ破壊してしまう様な対局シーンは描くわけにはいかないだろうし、そもそもこの巻で八一がリアリティをひっくり返しかねない才能を見せてしまった事で八一と雛鶴あいのキャラクターはどうしようもなく被ってしまうのである。 故にどちらかには消えて貰う意外に無い。 ……冒頭で述べさせて頂いた「雛鶴あいはトラックに轢かせて異世界転生でもさせてしまうべき」という暴言の真意をつらつらと語らせて頂いたがこの一点を除けば本作は紛れもなく熱い血の通った、そして限りのある才能を死に物狂いで稼働させて凄惨極まりない生き残りに全てを賭けた四人の奨励会員の姿を描いた紛れもない傑作である。 余り評判の宜しくない白鳥士郎のあとがきも辛香という悪役誕生の物語だと思えば作者の人間臭さ・泥臭さが伝わってきてそれほど悪くも無いと思わされる。 わざと読者に対して憎まれ口を叩きつけた様な白鳥士郎だけど、その悪役ぶりを貫き前作まででは書けなかった世界を、どうしようもなく泥臭い人間の世界を徹底して描き続けて欲しい。 そんな事を想わされたシリーズ第12巻であった。 ネタバレを全力でするので、嫌いな人は読み飛ばしてください。 長かった奨励会編、一番のお気に入りは大人気のおっさんが活躍する七巻の話で、「やっと目が醒めたんや」が最高ですが、その巻の鏡洲も大好きでした。 もう十回は読み返しましたね。 今巻、物語を盛り上げるためには仕方ないとは言え、あそこまで鏡洲を応援させてこれとは……。 それでも創太にネクタイを受け継ぐシーンで泣きしましたが笑。 僕個人としては二人が結ばれるよりも、鏡洲の話が大きく印象に残ります。 奨励会編は非常に長く、りゅうおうがおしごとすることがほとんどない章で、もっと帝位戦にスポットを当てた話をしてくれよと思っていましたが、大満足です! あとがきを読むとこれフィクションだけどフィクションじゃないなってなりましたね。 より感動。 と、ここまでは感想戦を読むまでの感想です。 後半の於鬼頭インタビューは読んでいて凍りつくほど夢中になりました。 読んだ直後にレビューってなるともう感想戦しか出てこないレベルです。 やっぱり八一が魔王みたく恐れられるシーンは最高。 二ツ塚(どこかで読んだことあるキャラが本当に沢山出てくる巻でしたね)が最高の喜劇って言った話で、五巻の八一が自分は負け続けて才能がない、だとか言ったシーンが広まったら大ブーイング間違いなしだな、と思い笑いました。 まず七巻を読んで奨励会編を再度楽しみ、十一巻を読み返して封じ手を堪能してこの巻に入ることをオススメします。 もちろん生石との挑決者決定前の対局や、三段リーグ初戦や、八一の新構想が出る話を振り返ってからってのも大アリですね。 総括して、この巻は長いようで短かった奨励会編の幕閉めと、ちょこちょこ出てきた八一のヤバさを全面に出した名作です。 奨励会編の中でも女流名跡戦の話が培われており、この巻でもそれに繋がりそうな場面があるので、この先も読み返す必要があります。 熱い! ・「熱い」将棋小説の12巻目。 6巻から続いていた奨励会編の一区切り。 四段昇格者決定。 主人公の新タイトル挑戦も含む。 ・いわゆるライトノベル的な、かわいい・あざとい・どたばた要素はあるものの控えめ。 10巻以降は、作品の看板が幼女から人間にシフトしている印象。 わかりやすい看板で知名度を上げる段階は越えたからか。 今巻は表紙にも幼女はいません。 ・個人的には、前巻や今巻の姿勢の方が好ましい。 幼女パートは物語の推進力が薄いので。 愛らしくても話が進まないのなら、削ってくれて構わない。 ・奨励会編で登場した様々なキャラクター達に、一応の落としどころが用意されている。 年齢も才能も生き様もばらばらな面々に命を与え、人間関係の大風呂敷を畳み切る手腕はお見事。 ただ扱う人数が人数なため、今巻は描き方が群像劇寄り。 視点人物がころころ変わる。 そこは読み手によって好みが分かれるかもしれない。 ・出戻りの奨励会員・辛香さんの描写が秀逸だった。 主要人物達に比べれば僅かなページ数の割き方ながら、読者に与える印象をがらりと変えてくれた。 ・一番面白かったのは感想戦パート。 今作が友情・努力・勝利で仕上がるのは、その下に主人公の圧倒的な才があるからなのかどうか。 人もソフトも超越した存在が、今後何をやらかしてくれるのか。 ・竜王防衛戦以降長らく引っ張られてきた、関東棋士達からの主人公への呼び方も判明。 新シリーズにも期待。 ・今作の著者は、桂香さんや鏡州さんのような持たざる者を描くときに強く感情移入するようだが……私はできたら、才ある側にも深く切り込んでみて欲しい。 それも3巻の桂香さんのような凡人視点ではなく、確かな天才の視点で。 評価の高い定石を繰り返すだけでは、将棋も物語もつまらないだろう。 理解されざる者を、容易くは理解されざるままに、しかし理解可能な物語で描き切ってみて欲しい。 その点では、今巻終盤の創多のパートはまだまだ不足を感じた。 この作者ならもっとやれるはずだ。

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