俺ガイル ss 大学 陽乃。 大学でも俺の青春ラブコメは間違っている。

雪ノ下「もしかして……比企谷くん?」

俺ガイル ss 大学 陽乃

俺は比企谷八幡。 総武高校2年……だったのは、もう10年も昔の話だ。 ……いや、今言いたいのはそう言うことじゃなくて。 結婚して5年目、正直罪悪感がヤバい。 毎朝くたびれた顔をして出勤し、そして毎晩さらに、くたびれたを通り越して死にそうな顔をして帰ってくる妻を見ていると、それに比べて俺は一体何をしているのかという気持ちになる。 雪乃の力になってあげれない自分が、嫌になってくる。 俺は俺なりに、せめて雪乃がすぐ休めるようにと色々と気をつかっているつもりなのだが、それでも今のところ、雪乃の体調の維持が精一杯だ。 最近は、あれほど雪乃が愛して止まなかったパンさんもこの家から忽然と姿を消している。 体力の回復に精一杯で精神の安らぎにまで割いている時間がないのだろう。 もはや、無力感を通り越して俺が雪乃を追い詰めているのではないかと思うまである。 第一章 やはり比企谷八幡は変われない 「……ふぁ」 朝5時。 冬場は寒く、出来ればこのままベッドから出たくはないが、そんなことは言っていられない。 主夫の朝は早いのだ。 「今日は月曜日……燃えるゴミの日だな。 」 安直なセリフに聞こえるかもしれないが、実はこうやって逐一声に出して物事を確認すると言うのは、家事をするに当たってとても大切なことである。 下手をすると、 「あれ、俺って次、何をするんだっだっけ……」 となって、また確認する羽目になり、二度手間、つまり時間の無駄になる。 俺は無駄なことは絶対にしたくないタイプだからな。 例えば日曜の朝にそんなことしてみろ。 プリキュアが見れなくなる。 ……まあ、最近はそのために30分も時間を使うのが申し訳なくなってきて、見る機会も少なくなってきているんだけど。 雪乃は日曜だろーとなんだろーと連日出勤である。 どうやら、労働基準法というのは労働者のみに適用されるものであって、使用者にとってはどれだけ働こうが関係のないものらしい。 それが本当にそうなのかは知らないが。 まあ、それはともかくとして。 「……ああ、八幡、おはよう。 早いのね……」 「……ん、ああ、おはよう」 雪乃が起きてきた。 現在時刻午前5時42分。 ちょうど朝ごはんが出来上がったタイミングだ。 「……それで、今日は何時くらいに帰ってこれそうなんだ?」 「えっと……10時くらいかしら」 ……どうやら今日は帰ってこれないようだな。 目線が泳いでるぜ、バレバレだ。 「わかった、じゃ、そうする」 「ええ、何て言うか、その……ありがとう、私のために」 ……最近こいつは、全く毒舌を吐かなくなった。 高校時代には、あんなに、息をするように吐いていた毒舌を。 原因はやはり、仕事だろう。 おかげで、日々の会話が味気ない。 感謝の言葉しか並べられていない会話なんか、はっきり言ってうんざりするだけだ。 それでも俺は、 「いや……まあ、仕事、頑張れよ」 こんな答えしか返してやることができない。 気のきいた言葉なんて、返してやることができないのだ。 今日は結婚記念日だというのに…… 青春時代、それこそ10年前には、女って、何でそんなに記念日を気にするんだろうな、と思っていたものだが、今となると、その気持ちがよーく理解できる。 要は、口実だ。 大切な人と一緒にいるための口実。 本来女性が立っている方が多いポジションに立ってみて、それが理解できた。 ……俺が女性的になった訳じゃないよ?うっふんとか言わないよ? 「八幡、シャワーを浴びてくるわ」 「わかった」 雑談ばっかりでストーリーが全然進んでいない間も、どうやら雪乃は、しっかりと出勤の準備を進めていたようだった。 それから一時間後。 シャワーを終えた雪乃は、用意されていた朝ごはんを食べ、化粧を済ませて、今正に出勤しようとしていた。 俺は玄関先に見送りに行く。 「……できるだけ、早く帰ってくるから」 そう言って浮かべる笑顔でさえ、俺たちがあれほど嫌った嘘や欺瞞で繕われているように感じる。 今の雪乃は。 もはやあの頃の雪乃ではない。 「わかった」 しかしそれは、俺にも言えることなのかもしれなかった。 本当は分かってなどいないのに。 仕事になんかいって欲しくないのに。 つい、「いつもの流れで」言ってしまう。 それが惰性であると知っていても。 「……いってきます」 「いってらっしゃい」 ……違う、そうじゃない。 俺は何も変わってなんかいない。 相も変わらず、俺はそれ以外の選択肢を持てないでいるのだ。 10年前のように。 第二章 しかし材木座義輝は暴走する。 その日の午後、俺の携帯にとある人物からの着信があった。 材木座義輝。 10年前、よく奉仕部に依頼をしてきた、常連のうちの1人だ。 今は確か…… 出版社を起こしたんだっけ? とりあえず電話に出る。 「もしもし」 「ふはははは!我だ!八幡!」 プツッ。 ……プルルル。 「もしもし」 「あ、もしもし八幡?我」 「おう、材木座か」 「あー、今時間大丈夫?」 「ん、良いぞ」 ……一回電話を切ってから出る。 これ材木座と話すときの常識。 一回目で出ちゃうと、終始あのテンションだから疲れる。 「それで、何の用だ?」 「えっと、仕事だ」 「またか……」 「なっ!ちゃんと報酬は払っておるではないか!無礼な!」 「はいはい……」 材木座は、月1のペースで俺に仕事を依頼してくる。 なんてことはない、ただのモニタリングだ。 材木座のところで発刊した本を読んで、どんな年代の、またどんな性別の人に売れそうかを教える。 ……それだけで、何と不労所得が月20000円! Youtuberもビックリだ。 まあ、あいつがそれで助かるってんなら、断る理由もない。 現に、本屋で「あ、これ読んだやつだ」という本を見つけたこともある。 売れたかどうかは知らん。 「……で、今回のは何だ?」 「実はな、今回の原稿は、何と我が直々に書き上げたのだ!」 「……ほう」 こいつ、実はあの2年間で並々ならぬ文章力を身につけ、大学のサークルで見事電撃大賞を受賞、一時期プロのラノベ作家でもあったのだ。 そんなあいつが新作を出すとは。 高校時代とは違ってワクワクするぜ。 「原稿は既に送ってある。 では八幡!また会おう!」 「ああ、材木座、待て」 「何だ?八幡、我が友よ」 ……そういえば、こいつも一応、社長、なんだよな。 「……聞きたいことがある」 「わかった、手を貸そう」 ただし、 と、材木座は付け加えた。 「我はまだ昼食を取っておらん。 場所はこちらが指定する。 よいな?」 「ああ、構わない」 「であればよし!今から向かうぞ、八幡よ!」 ピッ。 「わははは!おい秘書よ!我はちょっくらサイゼリヤに行ってくるぞ!」 ……あ、あいつ、間違って通話ボタン押しやがったな…… どうやら材木座の携帯はハンズフリー状態のまま放置されているらしく、周囲の喧騒がけたたましく聞こえてくる。 相変わらずうるさい職場だ。 ま、社長があれだからな…… そうして、俺が電話を切ろうとした時だった。 「もしもし、勝手にお電話変わりました。 秘書の戸塚と申します。 ……えへへ、八幡、久しぶりだね」 お、戸塚だ! やった! 「おう。 大丈夫か、職場に毒されてないか?戸塚」 「あはは、とっても楽しいよ!あ、そうだ!そういえば、今度結衣が遊びに行きたいって言ってたから、来週あたり、またお邪魔させてもらうねー!」 「わかった、待ってるぜ!」 「……と、そうだ、もうひとつ。 ねえ八幡、材木座くん、八幡と話せると、すっごく喜ぶんだよ!だからさ、えっと、お仕事じゃないときにも、良かったらお話してあげてね!」 「戸塚の頼みだからな、わかった」 「ふふ、八幡らしいや。 じゃあ、集合場所はサイゼリヤっぽいから、遅れないようにねー!」 そう言って、戸塚は電話を切った。 来週戸塚が家にくる…… やった! これはパーティーだな! 久しぶりに由比ヶ浜とも話ができるから、雪乃も喜ぶだろう。 雪乃が居ればだけど…… …… ダメだ。 早く材木座の所に行こう。 俺は、急いでサイゼリヤに向かった。 第三章 そして比企谷八幡は思い出す。 急いで準備を整え、二十分後。 サイゼに着いたはいいものの、結構混んでんな…… 辺りを見渡して、とりあえず体格のいいやつを探す。 すると、 「 おーい、八幡!」 そこにはこちらに向かって手を振る天使の姿が! あとついでに材木座! 材木座、ナイス目印だ! 流石の体格だぜ! ひとまず、二人と合流することに成功した。 が、材木座は、 「おっと、漆黒の堕天使が我を呼んでいる!とうっ!」 ……などと言い、まあ、食事の場なので後は伏せる。 気持ち悪いから黙って行けよ…… しかし、材木座が居なくなったことによって、言っちゃ悪いが、最高の状況が生まれたのだ。 俺は今、戸塚と二人っきりである。 目の前に戸塚。 俺の目の前に戸塚。 いやあ、随分と久しぶりだなぁ…… 年甲斐もなく、ついはしゃいでしまいそうである。 ……しかし、今はお互い家族持ち。 それに加え、戸塚の方は一家の大黒柱。 見た目はそんなに変わらないけど、やはりどこか、父親としての威厳が感じられるのだった。 「えへへ……やっほー、八幡」 しかし。 やはり戸塚はとつかわいい。 「ねぇ、八幡はご飯食べた?」 「あ……食べたけど」 「そっかー、八幡主夫だもんね!」 ……今のはポジティブに捉えて良いのだろうか。 「うちの主婦も、もうちょっと頑張ってくれたらなぁ……」 そう言って、冷たい視線を斜め下に向ける戸塚。 どうやら、由比ヶ浜の料理の腕は相変わらずらしい。 ……というか、今、何か見てはいけない物を見てしまったような気がする。 戸塚は、すっかり世の働くお父さんだった…… 「はっちまーん!待たせたな!懐かしの剣豪将軍再臨!」 ……おっと、どうやら材木座が帰ってきちまったらしい。 「むむっ、何だ八幡!その冷たい視線は!もしや新たなる闇の力、アイズ・オブ・アイスか?」 「あー、また始まっちゃったね……」 「おい材木座、戸塚が引いてんだろ、やめろ」 「いいよ、慣れてるから」 材木座、お前いつの間に戸塚とそんな中に…… あれか、単純接触効果か!? ……とか何とか言って、俺達はしばらくの間、久しぶりの再会を祝うようにはしゃいでいたのだった。 しかし、やはりその時は訪れた。 「……ところで八幡、話って何?」 「そうだそうだ、我も気になってたところだ」 「ああ……そうだったな」 とは言っても、本当に忘れていた訳ではない。 むしろ、今までオーバーにはしゃいで、無理やり頭の片隅に追いやっていたようなものだ。 いざ話し始めるとなると、怖くてしょうがない。 しかし同時に、そんな悠長なことを言っていられないのも、また現実だった。 「何でも聞くよ、八幡」 「ああ、遠慮なく話せ」 「……ありがとう」 正直話しづらかったが、俺は、最近雪乃が働きづめで全然休めていないこと、それも、体力、精神力共にもう限界に近いであろうこと、そのせいで、夫婦仲があまり芳しくないことなどを、彼らに打ち明けた。 そして、 「なあ、材木座。 お前も一応、雪乃と同じ社長だろ?今の話を聞いて、何か俺にできることがないか、考えつかなかったか?」 ……だから何だ、と言われそうな質問だが、俺は藁にもすがる思いで材木座に問う。 しかし、ついにその答えが帰ってくることはなかった。 その代わり、 「……ねぇ材木座くん」 「……うむ」 二人は、俺の話が終わるや否や、何かこそこそと話をし始めた。 「な、何かあったのか?」 「いや、ちょっと……ね」 「うむ……」 「何だよ、その曖昧な返事は」 「だって……ねぇ、材木座くん」 「うむ……八幡よ、これは本当に言いづらいことなのではあるが……」 「「変わったね な 、八幡」」 「……っ!!」 がばっと、俺の心が抉られる。 それはつまり、この一連の原因は俺にある、ということなのだろうか。 やはり、俺が悪いのだろうか。 ……いや、そんなこと、分かりきっていたことだ。 俺が悪い。 それはわかっていた。 雪乃はあんなに頑張っているのだから。 ……対して俺は、何もしていないのだから。 「……八幡」 帰り道、不意に戸塚が口を開いた。 「八幡てさ、雪乃さんのどこを好きになったの?」 「……」 「悩むよね。 多分、僕が想像している以上に、八幡は雪乃さんの良いところをいっぱい知ってて、それで、雪乃さんを好きになったんだと思うから」 「……」 「それはわかる……僕も同じ」 「……ああ」 「僕はね、八幡。 葉山くんよりも、八幡よりも」 「……そうか」 「これは別に、そりゃあ結婚したからつまりそういうことだろう、っていう話じゃないんだ。 だから、もし、これで結衣が他の男の人と結婚していても、いやらしい話、それでも僕は結衣と結婚できると思うよ。 それでも結衣は、きっと僕を選んでくれるって、そう確信できる」 「……っ!」 「逆も同じだ。 もし僕が結婚していても、どこかで結衣と知り合うことがあったならば、僕はなりふり構わず、結衣に結婚を申し込むだろう。 そして一緒に子供を作って、幸せな家庭を築いていくんだ……今のように」 そう言って戸塚は、今までに見たこともないような満足げな顔をして…… そしてまた口を閉じた。 「……俺には」 俺には果たして、そんなことが言えるのだろうか。 相手の幸せを奪ってでも、 自分の幸せを投げ棄ててでも、 それでも一緒になりたい、だなんて…… ………………。 10年前、俺は、彼女にしっかりと伝えたはずだ。 自分の言葉で、ハッキリと伝えたはずだ。 ただそれを、今まで10年間、うっかり忘れていただけ。 ああ、そうだ。 そういうことだったのか…… ……瞬間、視界がパッと開けた感覚があった。 横を見ると、戸塚が微笑んでいた。 「……僕の言いたいことは、分かってくれたかな?八幡」 「……ああ、ありがとう、戸塚」 これでようやく、思い出すことができた。 10年前の覚悟を。 俺と彼女の、最初で最大の約束を。 ……そういえば、今日は結婚記念日だ。 あの約束を果たすのには、丁度タイミングがいい。 帰ったら、雪乃と二人で話し合おう。 そう思って、俺は戸塚に礼をいい、今度こそ帰路に着いたのだった。 ……しかし。 その日、やはりいくら待っても雪乃が帰ってくることはなかった。 第四章 しかし雪ノ下雪乃は煩悶する。 ……ふぅ、やっと片がついたわ。 時刻は……午前1時。 ああ、今年もダメだった…… ごめんなさい八幡、あなたも今日が何の日だったか、知らない訳ではないでしょうに…… 今日は……昨日は、私達の結婚記念日。 まあ、世の中には、結婚記念日なんてどうでもいい、なんて言う人達もいるのだけれど、私達にとってこの日は、ある特別な意味合いを持っている日でもある……それを八幡が覚えているのかは分からないけれど、毎年、期待してしまうものがあるのも事実。 つまり、私達にとってこの日は、一年の中で、互いの誕生日に続く3番目の記念日。 そんな大切な日を私は、こうして会社にいながら終えてしまった。 今年で3回目、いい加減八幡も怒っているわよね…… 「……はぁ」 独りでに出てくるため息も、もう何百回聞いたのだろう。 ため息をすると幸せが逃げて行くって言うけど、もしかしたらそれは、あながち迷信ではないのかも知れない…… 「社長、お疲れさまです」 「ええ、お疲れ様。 今日はもう遅いから、上がっていいわよ」 「え……あ……分かりました、失礼します」 「八幡……ごめんなさい」 私は、いつからか人の仕事まで背負いたがるようになっていた。 理由は分かっている。 ただの口実作り。 家に帰らないための、詭弁でしかない言い訳を求めているのだ。 八幡のため、と、自分にそう言い聞かせながら。 多分、今更私が家に帰ったところで、きっと八幡は、私の体を気遣ってすぐに寝るよう勧めてくるだろう。 自分の感情に、必死にブレーキを掛けながら、またムスッとした、しかし優しいあの顔で、不満など一切漏らさずに、私を迎えてくれることだろう。 私は、それを見るのが何より辛い。 ……彼はずっと隠し通せていると思っているのでしょうけど、実は、私はとっくに気づいている。 彼が、私達の間に子供を望んでいることを。 私だって、子供は欲しいと思っているわ。 あの人の子供を産んで、1日でも早く、今よりもさらに幸せな家庭を作りたい…… でも、未だにそれができないでいる。 私の仕事のせいで。 彼は優しいから、いつも私のことを優先してくれる。 朝も、いつも早い時間からご飯を作ってくれているし、帰ってきても、家の中はいつもキレイに整頓されていて、私がすぐに休めるようにベッドの用意までしておいてくれる。 私も、ついその優しさに甘えて、自分の体調の方をとってしまう…… 私のせいで、彼がどれだけ辛い思いをしているか。 私の弱さのせいで、彼がどれだけ心の中で泣いているか。 分からない訳ではないのだけれど、自分ではどうすることもできない。 だから、逃げる。 八幡の優しさを利用して、彼とのコミュニケーションを避ける。 避けつつも、心の中では彼の言葉を待っていたりする。 「……八幡、許して」 今のところそれが、私が言える精一杯の言葉だった。 携帯が鳴った。 ……葉山くん? 一体何の用かしら…… いや、違ったわ。 そういえば、私が彼に連絡を取ったのだった…… ああ、本当ダメね、私。 「もしもし、葉山くん?」 「ああ、雪乃ちゃんかい?」 「ええ、そうよ。 わざわざ連絡してくれてありがとう」 「何だ、覚えていたのか……正直、ちょっと不安だったよ」 そう言って、葉山くんは軽い笑みをこぼした。 彼にまで見抜かれるなんて…… 「まあ、こっちもちょうど今、決心が固まったところだからね。 タイミング的にはバッチリだ」 「今……?」 「まあ、詳しい話はうちでするんだろう?僕はもう少しで着くところだから、そろそろ雪乃ちゃんにも向かって欲しいかなーって」 「わかった、すぐ行くわ」 「待ってる」 ピッ。 …… 本当に、最低な女。 結局、自分のことしか考えてないんだから。 時間通り、私は葉山くんの家に着いていた。 「いらっしゃい、雪乃ちゃん」 「おじゃまします」 リビングに通され、葉山くんは何か飲み物を、と言いキッチンへ、私はそのままソファーに座る。 数分後、葉山くんはワインとグラスを持って戻ってきた。 「あの、私は、アルコールは……」 「ああ、そうなのか。 じゃあ、すまないが僕だけいただくことにするよ……素面じゃ、やっぱり厳しいところがある」 「……構わないわ」 葉山くんは、そう言ってワインをグラスに注ぎ、少しだけ口に含んだ。 「……じゃあ、最後に聞くけど、今からのことを聞いて、決して、雪乃ちゃんは罪悪感を抱かないでくれ。 悪いのは僕だ」 「分かったわ……」 「それと……あとはいいか。 じゃあ、短いが、語らせて貰うとしようか。 大学2年生で、当時の僕は、何も知らないまま家庭をもつことになった。 相手はどこだかのご令嬢。 お見合い結婚。 ほぼ政略結婚みたいなものだった。 それでも僕たちは、最初のころは、とても幸せだったんだ。 子供も作ったし、円満だった。 でも、それを壊したのは僕だ。 僕が彼女を信じきれなかったせいだ。 ……ある日のことだ。 僕はその日、接待でとあるホテルのレストランに行ったんだ。 結構名の知れたところでね、それなりに客もいた。 接待は順調、このままいけば、あと数分で終わりそうな、そんな時。 その客の中に、男を連れた彼女を見つけてしまった。 向こうも僕を見つけたようだった。 動揺した。 見間違いだ、と何度も自分に言い聞かせた。 詭弁でも何でもいいから、とにかく言い訳がほしかった。 とりあえず、そのときは仕事に集中することで何とか乗り切れた。 問題はそのあとだった。 家に帰ると、彼女はやはり気まずそうな顔で僕を迎えてくれた。 どうしたんだ、とか、何で、とか、僕は彼女にそんな質問すら、弁解の余地すら与えてやらなかった。 もしかしたら、僕の誤解かもしれなかったのに。 僕は、そこまで考えてやることすらできなかった。 そして、その後も僕らの間で話し合いは行われることなく、財産も親権も全て彼女に押し付けて、 結局、僕らは離婚した。 話が終わるころには、すでにワインは無くなっていた。 顔が赤い。 相当アルコールが回っているのだろう。 「ええ……ありがとう、葉山くん」 「礼には及ばないよ。 言うなら、それは彼に言ってあげてほしい」 「……どうして?」 「今の僕は、彼のお陰で生きる希望を失わずに済んでいるから。 「……で、僕からのことだけど」 「……はい」 「単純に、信じてやってほしい。 彼の人格を、何から何まで信じてやってほしい。 世の中には二種類の人間がいるが、彼はそれに値する方の人間だ。 雪乃ちゃんが素直になりさえすれば、彼はきっと君の期待通りの答えを返してくれるだろう。 いいか、嘘はつくな。 それでも、私にとってそれは大きなヒントだった。 腹を割って話し合う。 今まで逃げてきたことにピリオドを打つ。 無駄なことは一切なし。 それだけで良かった。 話が終わってから、三分くらい経った後、 「……彩加達の方も、上手くいっているかな」 ふと、彼はそう漏らした。 「戸塚さん?」 「ああ……気にしないでくれ。 それよりほら、こんなに遅くなったんだから、電話の一本でも入れておかなきゃ、あの愛妻家はきっと悶絶し出す頃だと思うよ」 「愛妻家……」 確かに、そうだわ。 葉山くんにもだけれど、私が一番助けられているのは、他でもない彼なんだから。 そう思うと、もういてもたってもいられず、私はすぐさま「我が家」に電話をかけることにした。 「葉山くん、ちょっと失礼するわ」 「ああ、構わない」 プルルル。 午前4時、起床。 ……やはり雪乃は帰って来ていない。 仕方ない、朝食は一人で食べるか…… アイツも忙しいんだろうしな。 そうしてベッドから下りたのだが、部屋の隅に寄せてある洗濯物を見て自分が昨日何をしていたのか、また何をしていないのかを思い出す。 「今のうちにまとめておかなきゃな……」 そう言って、ゴミ袋を取りにキッチンへ向かおうとしたのだが、寝不足のためか、立ちくらみをおこしてベッドに倒れこんでしまった。

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高校を卒業して、早いもので2ヶ月が経過した。 無事地元の大学に合格した俺だったのだが、家族から『一回くらいは一人暮らしを経験しておけ』とありがたくないお言葉を頂き、現在は大学に近い場所にあるアパートで生活をしている。 経験した人なら分かると思うが、一人暮らしをすると家族のありがたみがとてもよく分かる。 家に帰ったら夕食が作ってあったり、お風呂が沸かしてあったり。 そんな何気ない日常の大切さをしみじみと感じるのだ。 2ヶ月ほど経った現在でも、まだまだその現実に慣れず四苦八苦している。 梅雨の季節になり、洗濯物も段々と乾かなくなりさらに陰鬱な気持ちに拍車をかけているのだが、今の俺にはそれ以上に陰鬱な気持ちになる要因が存在していた。 俺のベッドを制圧し、ゴロンと寝転がってうちわで必死に胸元を仰いでいる姿は、とてもじゃないが人様にお見せ出来るものではない。 その駄目さを全開に披露している女性の名は、雪ノ下陽乃という。 妹曰く、容姿端麗、成績優秀、文武両道、才色兼備etcetcを兼ね備えたパーフェクトな女性らしいのだが、今目の前に転がっているのはどう見てもどう考えても別人にしか思えない。 あのおぞましい強化外骨格はどこへ行ったのやら。 勝手に転がり込んできたかと思えば、生活用品をいきなりぶち込んでくるし。 部屋では服や下着を脱ぎ散らかし、知らんふりしてゴロゴロと寝転がる。 挙句の果てには酔っ払って玄関に突っ伏してリバースするわ、足でテレビのリモコン操作するわ、風呂場にビールの缶が放置されるわ、駄目人間の究極系ってこんな感じなんだなと思える程の駄目さ加減を披露してくれていた。 そんな陽乃さんの現在の格好は薄手のキャミソール一枚にホットパンツという扇情的なもので、年頃の女性が同じく年頃の男の前でする格好には到底思えない。 本当にこんな人が将来雪ノ下建設の跡取りだったり、議員を目指していたりするあの雪ノ下陽乃なのだろうか? 何度見ても偽者にしか思えない。 「比企谷くーん。 ビールゥー!」 「昼間っから何言ってるんですか雪ノ下さん。 それにそれくらい自分でやってください」 「やーだー!のーまーせーてー!」 「あー……もう……」 あぁ、もう何なんだろうこの人。 これが学生時代にこれでもかと言うくらいに俺達を弄繰り回してくれたあの陽乃さんなのだろうか。 強化外骨格何処行ったんだよ。 何処に捨ててきたんだよ。 物を勝手に捨てちゃ駄目って小さい頃に習わなかったのかこの人は。 仕方無しにビールの缶を開け、陽乃さんに飲ませてやる。 彼女はんぐーと喉を鳴らしながら嬉しそうに飲んでいる。 あんたはあれか。 赤ん坊か何かか。 「比企谷君ってなんだかんだ飲ませてくれるからやさしーよねぇ。 あー、ごくらくー……」 幸せそうに俺に身体を預けてくる姿は、もう完全に駄目のそれだ。 そしてそんな陽乃さんを世話する俺も対外駄目な人間に思えてくる。 陽乃さんをあやしつつ部屋を見渡せば、俺のものはきちんと整理されているものの、彼女が持ち込んだものは乱雑に投げ捨てられ、他人には見せられない状態になっている。 どうせ放っておいても陽乃さんは片付けそうにないので、溜め息を吐きながら脱ぎ散らかした下着や服を洗濯機にぶち込んでいく。 美味しいシチュエーションのはずなのに全く興奮しない。 本当、泣きそうだ。 「出来ることなら俺の前でもしっかりして欲しいんですけど……。 あぁもう! またすぐゴミを散らかして……」 散乱したビールの空き缶や、つまみのカスをせっせと片付けていく。 何度も思ったけど、本当にこの人はあの雪ノ下陽乃さんと同じ人物なんでしょうか。 そっくりさんでしたって言われたほうがかなり救われるんですけど。 頼むからこれ以上俺の中の陽乃さん像を破壊しないで頂きたい。 「こんな姿比企谷君の前でしか見せないから大丈夫だよー。 あ、今の陽乃的に超ポイントたかーい」 酔っ払ってるからかなのか、顔を真っ赤にしながら何か言っている。 てかそのポイント制止めてください。 小町に会えない寂しさが蘇ってきちゃいそうじゃないですか。 まぁ部屋にこんなのがいるせいで、呼ぶにも呼べないってのもあるんですけどね? 「八幡的にはポイント最低点です。 何度も言っていますが、ベッドの上でつまみ食べないでくださいよ。 毎回シーツ洗う俺の身にもなってください」 はぁ……と本日何度目になるか分からない溜め息が漏れる。 溜め息を吐いたら幸せが逃げるよとは昔から良く聞くが、もう逃げる幸せが残っている気がしない。 引越し早々我が家に転がり込んできて即座に俺のベッドを占領し、好き勝手に荒らしている目の前の女性には最早怒りも湧いてこない。 というかどうしていきなり俺の部屋に転がり込んできたのだろうか。 そして同時に、どうしたらこんな駄目人間が出来てしまうのだろうか。 誰か是非とも教えていただきたい。 「ほら、雪ノ下さん。 明日の予定を言ってください。 それで起こす時間決めるんで」 「あしたはー、学校休みだからー。 昼まで寝てー、比企谷くんの作るご飯たべてー、お昼寝してー、雪乃ちゃんの写真集みて夕方は過ごすよー」 ゆらりと天を仰ぐ。 この寝転がって漫画片手にポテチ食ってる女性はここまで駄目になってしまっているのか。 雪ノ下家の厳しさが彼女をここまで追い詰めてしまったのか。 きっと幼い頃から厳しい躾をされ、録に自由もなく、苦しい生活を送ってきたのだろう。 そしてその抑圧された感情が、今こうして爆発してしまっているのかもしれない。 あるかないかも分からない雪ノ下家の厳しさを想像し、つーっと涙を流す。 決してそう考えなければ今の現実に耐えれそうにないからというわけではない。 決してない。 「明日は天気良いみたいですし出かけましょうよ。 少しは運動しないと身体に悪いですから。 ていうかバルサン炊きたいから出かけてください」 なんかこの人住み着いてから黒い奴がやけに発生するんだよね。 間違いなく陽乃さんのこぼすお菓子のせいだけど。 言ったところで直らないのは分かってるからもう諦め気味ですけどね。 「わーい。 比企谷君からのデートのおさそモグモグ」 不穏な事を言いかけた陽乃さんの口にポテチを流し込む。 俺も自分から外に行こうなんて昔なら絶対誘わなかっただろう。 でもあれだ、自分より遥かに駄目な人が出てきてしまい変わらざるを得なかったのよね。 なんというか母性本能ならぬ父性本能? でもできるならこんな娘は遠慮こうむりたい。 そして憧れの引きこもりライフよ、どこへ行く。 本当に器用な人だ。 先ほどまでの駄目人間の代表とは思えなくらいきりっとした姿をしている。 俺としては出来ればそのまま付けたままでいて欲しいのだが。 「どう? お弁当美味しい?」 「えぇ、今まで食べたどの弁当よりも美味しいです」 「わぁ、そう言って貰えると頑張って作ったかいがあるなぁ。 嬉しい」 ニコニコと笑う陽乃さんは、こうしてみれば普通の美女に見えた。 というか元々整った顔立ちをしており、スタイルも抜群なのでどうみても美女のはずなのだが、家での姿を知ってしまっているせいか、全然そのことを意識した記憶がなかった。 これはこれで相当まずい気がしてくるな……。 どこにこんな食材があったのだろうかと言うくらい美味しいそうに出来た弁当を見て、何故何時もこれが出来ないのか本気で疑問に感じたものだ。 そして本当に美味しいので、これから食事に関しては彼女に全て任せたくなる位だ。 マジで本当に美味しいんだもの。 「いつもありがとねー、比企谷君」 「……そう思うならもっとしっかりしてください」 「あははー、善処しまーす」 どうせしないんだろうなぁ、と思いながら弁当をもう一度口に運ぶ。 うん美味い。 たまにでもこんな美味しい弁当を食べれるなら、駄目な陽乃さん、略して駄目乃さんの面倒を見るのも悪くないと思えた。 こう考えるとやっぱ俺も完全に駄目人間だな。 うちに駄目乃さんが転がり込んできたが、どうやら俺はなんだかんだ面倒を見てしまうらしい。 To be continued.

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トナカイさんの俺ガイルSS集

俺ガイル ss 大学 陽乃

vip2ch. vip2ch. 遊びも人間関係もサークル単位になるし、始めのうちは俺も誘ってもらえてたんだが」 雪ノ下「事ある事に断ったのね」 八幡「………おい、どうしてわかった」 雪ノ下「『由比ヶ浜のサークルに俺という異物はいるべきではないから距離をおこう』……あなたの考えそうなことじゃない」 八幡「伊達に2年も同じ部活やってねぇなお前」 雪ノ下「由比ヶ浜さんの嫉着から逃れられるって相当よ。 顔は普通くらいなんだが、とにかくいいヤツでさ」 八幡「困ってるお婆さんがいたら助けるし、子供が溺れてたら川に飛び込む。 情報は嫌でも入ってくる」 雪ノ下「それでもその彼氏の素性まで詳しく知っているのはどうかと思うわ…」 八幡「ストーカーなんかじゃないぞ。 そ、俺と由比ヶ浜が疎遠になった上、由比ヶ浜は俺以外の男と恋仲になってしまった」 八幡「薄々、っつーか絶対勘づいてただろあいつなら。 由比ヶ浜自身はその歪んだ関係性に何の疑問も抱いてなかった。 そのクズがどれだけ恐ろしいかわかるよ。 12 ID:hLU5NYUb0 雪ノ下「で、そこはブラックだったのよね」 八幡「マジかすげぇなお前。 エスパーかよ」 雪ノ下「何十社も落ちる社会のゴミを拾ってくれるのなんてそれくらいしかないでしょう……」 八幡「その頃は、昔お前に言われた"生きる産業廃棄物"っつー悪口思い出して毎晩枕を濡らしたもんだ」 雪ノ下「とんでもない時間差ね」 八幡「ブラックながらも頑張ったんだよ俺。 まぁ半分自己犠牲に酔ってたおかげかもしれないけど」 八幡「その頃の俺は尋常じゃなく目が死んでたそうだ。 24 ID:hLU5NYUb0 雪ノ下「今のあなたのそれよりも酷かったの?」 八幡「もうね、こんなもんじゃなかったよ。 濁ってるっていうのか、なんだろうな」 雪ノ下「比企谷くんの眼球事情はそれくらいでいいわ」 雪ノ下「で、ブラック企業は何年続いたの?」 八幡「なんで俺がリタイアしてる前提なんですかね…」 雪ノ下「あら、違うの?」 八幡「3年続けたぞ」 雪ノ下「比企谷くんにしては頑張ったわね」 八幡「いや、違うんだって。 言っただろ 、これは自己犠牲の一種。 46 ID:hLU5NYUb0 雪ノ下「あら、それは………ご愁傷様」 雪ノ下「と、いうべきなのかしら……おめでとうというべきなのかしら……」 八幡「何も言わなくていいんだよ」 八幡「だから友達すくねぇんだよ…」 雪ノ下「そのセリフ、あなただけには言われたくなかったわね……」 八幡「だが事実だ」 雪ノ下「で、何でいきなり会社が倒産なんてしたの?」 八幡「ブラック企業にはよくある話だろ」 八幡「労働基準法違反」 八幡「社員の誰かが告訴した。 それで会社は裁判に負け、会社は倒産、俺たちは再び路頭に迷うことになった」 雪ノ下「………あぁ、重いわね」 雪ノ下「だけど、そんな急に告訴なんて起こるものなのかしら……」 雪ノ下「そういうところって、徹底的にそういうのが起こらないように手配するんじゃ……?」 八幡「まぁ、人死んだからな」 雪ノ下「はっ?」 八幡「過労で社員の一人が死んだんだよ。 ちなみにその人は俺の直属の上司だった……」 雪ノ下「……………」 八幡「優しくて真面目な人でさ。 死んだ目をしてる俺にも唯一気軽に話しかけてきてくれた」 八幡「仕事で辛いときとか、飲みに誘ってくれたりした。 仕事は丁寧に教えてくれた。 12 ID:hLU5NYUb0 八幡「………そして、その人は会社に殺された」 八幡「誰よりも会社を思ってて、誰よりも働いてたのに、会社はその人を酷使し続けたんだ」 八幡「その人が死んだとき、社長はなんて言ったと思う?」 八幡「『〇〇君は命を懸けてこの会社のために働いてくれた。 君たちも彼女を見習い、これからも頑張ってくれたまえ』」 八幡「ふざけんな、だよな」 八幡「慈しみも後悔もないんだ。 ただあるのは"死ぬまで働いてくれてありがとう"……何だよそれ。 先輩はオセロの駒なんかじゃねぇんだよ」 雪ノ下「………だから、告訴したのね?あなたが。 会社に復讐するために」 八幡「いいや、違う」 雪ノ下「ええ?」 八幡「大好きな先輩が死んだ。 その時は憎しみなんかよりも先にとんでもない喪失感に襲われた」 八幡「何もする気が起きなかった」 八幡「ただ言われた仕事をこなすだけ……頭の中は空っぽ」 八幡「ようやく気持ちの整理がついた時には、会社が潰れてた」 八幡「先輩は会社内でかなり人気のある人だったらしい。 どんな仕事も笑顔で引き受ける彼女は、従業員たちにとって太陽みたいな存在だったんだと」 八幡「そんな人が死んだんだ。 82 ID:hLU5NYUb0 雪ノ下「…………………」 八幡「気付いたらなんもなくなってたよ」 八幡「数少ない友だちも」 八幡「尊敬できる先輩も」 八幡「そしてついに家族からも見離された」 雪ノ下「……………………」 八幡「仕事がなくなって実家に帰ったら、お前みたいな穀潰しは我が家にはいらない、って追い出された」 八幡「小町は川なんとかと結婚して新婚だ。 76 ID:hLU5NYUb0 八幡「………うん」 八幡「……おう」 八幡「……………なるほどな、わかった」 八幡「雪ノ下」 八幡「残念だけどお喋りはここまでだ」 雪ノ下「その答えが………ッ!」 八幡「交渉決裂だ。 23 ID:hLU5NYUb0 テロリスト「イエッサー」 ドン 女「」 八幡「まずは一人」 雪ノ下「比企谷くんッ!やめなさい!」 八幡「あー、あー、聞こえてるか?警察の皆さん」 八幡「ていうか監視カメラの映像は見えてますよね、ご覧の通りです。 あなたたちがこの包囲を解かない限り、十分に一人ずつ人質を殺していきます」 雪ノ下「比企谷くんッ!!」 八幡「あー、雪ノ下、今は黙ってろ」 八幡「我々の要求は1つ。 警察を撤退させ、我々をこの銀行から逃亡させること」 八幡「我々が人を殺すのを躊躇するような人間でないことはわかってもらえたはずである」 八幡「要求を呑め。 28 ID:hLU5NYUb0 雪ノ下「ッ……!?姉さんがいるの?」 八幡「さぁな、だがこの声明を聞いたならあの陽乃さんは黙ってないだろ」 雪ノ下「まさか……あなた最初から私を狙って?」 八幡「いや、それは偶然。 ただ利用できるものは何でも利用するタイプなんでね」 雪ノ下「……私を殺さないつもり?」 八幡「俺がそこまで甘く見えるか?」 雪ノ下「さぁ。 でも少なくとも、あなたは弱い」 八幡「………………」 雪ノ下「あなたが銀行強盗どころではないことをしでかそうとしているのはなんとなくだけどわかるわ。 27 ID:hLU5NYUb0 雪ノ下「あなた……狂ってるわ」 八幡「百も承知だよ」 雪ノ下「こんなもので得た新世界なんて間違ってる!」 八幡「どんなプロセスがあろうと、新世界は新世界だ」 八幡「武力行使での内戦の鎮圧は間違っているか?」 雪ノ下「内戦と今の世の中を同列に語らないでちょうだい」 八幡「同じだよ。 俺から見ればね」 八幡「銀行員なんていう安定した職につけてるお前らにはわからないさ」 八幡「わかりたくもない。 08 ID:hLU5NYUb0 八幡「警察は?」 テロリスト「……未だに動きを見せません」 八幡「……そうか」 八幡「警察の諸君、そろそろ20分が経過する。 我々としても無駄な血など流したくはない」 八幡「我々の要求を呑め。 32 ID:0cNwdzKS0 雪ノ下 …………姉さん! 八幡「……おっと」 八幡「来ましたね、陽乃さん」 陽乃「比企谷くん、今すぐ人質を解放しなさい」 八幡「だからするって言ってるじゃないですか。 あなたたちが撤退してくれないと解放できないんですよ」 陽乃「君たちは自分の立場がわかってないようだね」 八幡「そちらこそわかってないのでは?」 八幡「どんな脅しを使おうと、このまま撤退する気がないというのなら、人質を殺します」 八幡「俺は嘘はつきませんよ」 陽乃「どの口がそれを言うのかな?」 陽乃「嘘に嘘を重ねていろんなことから逃げ続けて」 陽乃「欺瞞なのは世界じゃない。 63 ID:0cNwdzKS0 sageてどうすんだ…… 八幡「やれ」 子供「あ、あ………」 陽乃「ま、待って!!」 八幡「初めてあなたの人間らしい声が聞けたと思いますよ」 八幡「今度は何ですか?こうしてる間にも三十分目は近づいてきているんですよね」 陽乃「…………撤退」 雪ノ下 …………!? 陽乃「人質の命が最優先よ。 75 ID:0cNwdzKS0 八幡「よし、警察は全員撤退したな?」 八幡「わかった、お前らはアジトで次の準備だ」 雪ノ下「比企谷くんッ!」 八幡「あー……雪ノ下。 せっかくの再会がこんな形でごめんな」 八幡「今日お前と会話できて楽しかったわ」 雪ノ下「比企谷くん………あなたは、変わってしまったのね」 八幡「そりゃそうだろ、変わらない人間なんていない……」 八幡「お前だってずいぶんと丸くなったじゃないか」 雪ノ下「高校時代のあなたは、もっと強かった!だからこそ危なっかしくて、友だちも少なくて、傷つくことも多かったと思うけれど……」 八幡「そいつぁ、ただのお前の願望ってやつだ」 八幡「俺は弱い人間だよ。 48 ID:0cNwdzKS0 大志「……まさかあのお兄さんがね」 雪ノ下「そういえば正式に弟になれたよね。 おめでとう」 大志「えっ?誰から聞いたんすか?」 雪ノ下「………今さっき、比企谷くんからね」 大志「……話したんすか?」 雪ノ下「ええ。 そこでいろいろ教えてもらったわ。 28 ID:0cNwdzKS0 雪ノ下「はっ?」 大志「えっと……どういうことっすか」 警察B「ええ……最初に見せしめとして殺された女性がいたじゃないですか」 雪ノ下「………」 警察B「硝煙の匂いや、床に広がっている血液から、撃たれたのはほぼ間違いないはずなのですが…」 大志「撃たれたはずの、女性の死体がないってことっすか?」 警察B「え、えぇ……だから俺たちもわけがわからなくて」 雪ノ下「………………まさか」 雪ノ下「ねぇ、床の血液って、本物なの?」 警察B「はっ?いえ、詳しくは調べてませんが……状況的に本物かと」 雪ノ下「今すぐに調べて」 警察B「は、はぁ……」 大志「ゆ、雪ノ下さん、何を……」 雪ノ下「……あの男。 61 ID:0cNwdzKS0 女「うまくいきましたねー」 八幡「あの程度の仕掛けで簡単に騙されてくれるとはな」 女「ですねー。 あの人ももう少し頭が回る人だと思ってたんですけどー」 八幡「空砲とはいえど音もするし、血糊といえどあれだけの量ならいくら陽乃さんでもな」 女「おまけに普通人質の中にテロリストがいるだなんて思いませんもんねー?」 八幡「ま、後はお前の死んだふりもうまかったわ。 09 ID:0cNwdzKS0 女「これからアジト戻るんですよね」 八幡「あぁ、そのことなんだが……」 八幡「作戦は変更だ。 アジトは捨てる」 女「………えっ?」 八幡「あの陽乃さんが、あんなにあっさり俺たちを見逃すと思うか?」 女「…………まさか」 八幡「とっくにアジトなんて特定されてるんだろうな、おそらく今アジトは警察に包囲されているだろう」 女「そんな………じゃあどうするんですか」 八幡「慌てるな、ここまでのことをしたんだ。 28 ID:0cNwdzKS0 一色「………私をこんなのにしちゃったのは、他ならない先輩なんですよ」 一色「私たちを焚きつけるだけ焚きつけて、後は全部私たちに任せて逃げるんですか?」 一色「そんなの絶対許しません」 八幡「………お前」 八幡「でも、これ以外に方法はないんだよ。 全員捕まるか、俺だけ捕まるか。 どっちがいいか考えろ」 一色「全員笑って帰る。 66 ID:0cNwdzKS0 八幡 昔の俺と、今の俺の弱さの違い。 そんなものは簡単な話だ 八幡 昔の俺は、常に手に入れることに怯えていた 八幡 手に入れようとして、失敗して、傷ついてきたから 八幡 手に入るんじゃないか?と期待して、裏切られて、傷ついてきたから 八幡 だから予防線をはっていた 八幡 俺が何も手に入れようとしない、その理由付けが欲しかった 八幡 だから率先して我が身を犠牲にした 八幡 人助けのためだから。 俺は優しいから。 そんな言い訳をするために 八幡 だが、今の俺は。 いや……高校卒業してからの俺は、だ 八幡 手に入れた。 開けてくれ」 ??「………わかった」 ガチャ 八幡「…………………」 ??「お前の言ったとおり」 比企谷父「」 比企谷母「」 ??「拘束しておいたよ。 98 ID:0cNwdzKS0 八幡 葉山隼人…… 八幡 家督を継いで弁護士になってた彼だったが、弁護士になりたかったわけでもなく、ただ期待に答えるままに生きてきた結果、人生の目標を見失ってしまったのだと 八幡 正直、こいつがあんな簡単に落ちるとは思っていなかった 葉山「いろははどうしたんだ?」 八幡「……金と俺を車から放り出して、1人でアジトに突撃してった」 葉山「…………それって」 八幡「あぁ。 俺も抵抗はした。 だが止められなかった」 葉山「なぜ助けに行かなかった!!」 葉山「もう一つの車を使えば、いろはを追えたはずだ!!」 葉山「君が犠牲になれば、いろはたちもっ………!」 葉山「…………すまない」 八幡「いいや、その通りだ」 八幡「だけど、俺はあいつを信じることにしたんだよ」 八幡「『みんな笑って帰る』……それが私の最善ですってさ。 22 ID:0cNwdzKS0 葉山「……その強さが、君の命取りだ」 八幡「何?」 陽乃『やっぱり比企谷くんはこっちに来たねー』 八幡「なっ………!?」 八幡 陽乃さんの声………!?まさか、ここもっ………!? 警察『テロリストどもに告ぐ!』 警察『この家は包囲されている。 君たちに逃げ場はない。 大人しく投降しろ』 八幡 なぜここがバレた………!?葉山たちはあくまで俺の友達としてこの家に侵入した。 後は通報する間もなく制圧できただろう 八幡 ………考えられる可能性は! 八幡「葉山、やってくれたな」 葉山「なんで俺なのかな?」 八幡「陽乃さんと一番近い人物」 葉山「ははっ!ほとんど勘の域じゃないか。 94 ID:0cNwdzKS0 テロリスト「とりあえずこの裏切り者を殺して、残りの2人で交渉だ」 八幡「やめろ」 テロリスト「はっ……?」 葉山「…………」 八幡「投降しろ」 テロリスト「は、はぁ?」 八幡「投降するんだ」 テロリスト「そりゃねぇだろリーダー!だったら俺たちは今まで何のために……」 八幡「人を殺すためじゃない」 テロリスト「…………」 八幡「………どけ、葉山」 葉山「………君は、本当に強いよ」 八幡「よせっつってんだろ」 葉山「今の君なら、結衣や先輩さんも助けられただろうに」 八幡「黙れ」 葉山「……………」 八幡「\ /」ガチャ 陽乃「………へぇ」 陽乃「普通に出てくるんだ」 八幡「……お前らも、続け」 テロリスト「\ /」ゾロゾロ… 陽乃「…………なるほどね」 陽乃「それが君の抗い?」 八幡「………何のことですか」 陽乃「ふふ、話す気はないんだね」 陽乃「——————比企谷八幡。 75 ID:0cNwdzKS0 ーーーーーーーーー面会室 警備員「入れ」 八幡「………………」 雪ノ下「…………………」 雪ノ下「あなた、比企谷くん?」 八幡「………んだよ」 雪ノ下「い、いえ……。 あなた坊主姿全然に合わないわね………」 八幡「笑ってんじゃねぇよ」 八幡「で、なんか用か」 雪ノ下「あれだけ大口叩いて結局葉山くんと姉さんに追い詰められて捕まった哀れ谷くんを笑ってあげようと思ってね」 八幡「面会は以上のようです」 雪ノ下「あぁ、冗談よ冗談!」 八幡「だったらなんだ!この姿あんま人に見られたくないんだよ!」 雪ノ下「それは、その……」 雪ノ下「心配で」 八幡「……………槍でも降るのか?」 雪ノ下「勘違いしないで欲しいのだけれど、あなたは一応私の数少ない知人の1人であって、その人が波乱万丈な人生を送ったあげく牢獄に入れられたとあっては嫌でも心配になるのが普通でしょう。 私が普通の感性を持ってないとでも思っているのかしら?」 八幡「ははっ、変わんねぇな、お前」 雪ノ下「それはそうよ。 人なんてそう簡単に変わらないのだから」 八幡「……………」 雪ノ下「あなたは自分の弱さに振り回され、人としての道を踏み外してしまったかもしれない」 雪ノ下「でも、あなたの根本にあるものは、何も変わってないと思うわ」 八幡「………それが慰めになるとでも?」 雪ノ下「さぁね。 91 ID:0cNwdzKS0 雪ノ下「私や、彼女らだけじゃない」 八幡「はっ……?」 ガチャ 戸塚「……えへへ、久しぶり」 材木座「わーーっはっは!!哀れだな八幡!!この年で世界を変える 笑 とか痛いぞ!!」 結衣「う、うぅ……耳が、耳が」 小町「よーしよし結衣さん、ちょっと材木座さんうるさいですよ。 怯えてるじゃないですか」 川崎「……ぶはっ!何その頭wねぇねぇ大志みてあれ!」 大志「事情聴取で見慣れてるんだよね…」 戸部「うっわー!ヒキタニくんマジ罪人じゃん!パないわーマジパないわー」 三浦「戸部、うるさい。 98 ID:0cNwdzKS0 戸塚「えへへ、恥ずかしいねこういうの」 八幡「ああ俺も恥ずかしい」 八幡 大勢の知り合いの前で慰められるってどんな拷問? 小町「小町も似たような気持ちかな」 小町「殺してないとはいえ、罪のない人たちを怖がらせたわけだし、お父さんやお母さんにまで手を出した」 小町「小町ね、すっごく怒ってる。 呆れ通り越して軽蔑してる」 八幡「…………すまん」 小町「謝るくらいなら最初からしないで。 29 ID:0cNwdzKS0 小町「………次何かあったら、必ず小町に相談すること!」 八幡「ああ…………わかったよ」 八幡 やばい、これは来る。 意識的にしろ無意識的にしろ、こいつら完全に俺の心を折りに来てる 結衣「…………あのさ、ヒッキー」 八幡「………由比ヶ浜」 三浦「結衣………ほら、隠れてな」 結衣「いや………こういうのは、やっぱりちゃんと目を見ないと、ダメだと思うから」 八幡 …………震えてる 八幡 七年近くたった今でも、まだこれだけ酷いのか……男性不信 結衣「あのね、ヒッキー」 結衣「ごめんなさいっ!」 八幡「はっ!?」 八幡「いや、お前が俺に謝られても困るというか……謝るべきなのはどちらかというと俺というか……」 結衣「あたしがしっかりしてたら、ヒッキーはこんなことになっちゃわなかったんでしょ?」 結衣「だったらそれはあたしの責任。 23 ID:0cNwdzKS0 三浦「あーしはね、あんたが大っ嫌い」 八幡「………あぁ、そうだろうな」 八幡「俺はお前よりも由比ヶ浜の近くにいることが出来たのに」 八幡「それを遠ざけて、結局由比ヶ浜を傷つけた」 三浦「は?何言ってんの?あーしそんなことが言いたいんじゃないんだけど」 八幡「はっ?」 三浦「あんたが何かいろいろ考えすぎる性格なのは知ってるよ。 結衣から身を引こうとしたのも、あんたなりに結衣のことを考えた結果だろうし、そこは別に責めたいわけじゃない」 八幡「でもそれは、ただ由比ヶ浜から逃げてただけで……」 三浦「逃げるのがそんなに悪いこと?」 八幡「えっ?」 三浦「考えて考えた結果が、結衣から離れることだっていうならそれは別に問題があることじゃないよ」 三浦「あーしが許せないのは、その後」 三浦「あんたが大学やめてから、結衣がどれだけ塞ぎ込んでたか知らないでしょ?」 八幡「……由比ヶ浜が?」 三浦「ヒッキーが辞めちゃったのはあたしのせいだーってさ。 あたしもやめるーとか言い出して大変だったんだから」 結衣「あ、あはは……そんなこともあったね」 三浦「結衣の人生は結衣の人生。 自分の人生で起こったことは全部自分の責任でしょ。 08 ID:A3Fv7f6T0 八幡「三浦」 三浦「なんだよ」 八幡「ありがとな」 三浦「はっ?」 八幡「お前が言ってくれなかったら、俺は一番大事なことに気付けないままだった」 三浦「……別にあんたのためとかじゃないし。 怒ってくれる人がいる。 94 ID:A3Fv7f6T0 大志「…………ほら、姉ちゃん」 川崎「……えっ?いや、アタシは別に……. 」 小町「まーたそれですかお姉ちゃん」 川崎「小町まで…いや、本当にいいんだって。 41 ID:A3Fv7f6T0 雪ノ下「観念しなさい川崎さん」 大志「小町には勝てないよ」 八幡「おい、何ナチュラルに小町呼び捨てにしてんだオイコラ」 小町「ちょっとお兄ちゃん空気読んで」 川崎「………その、さ」 川崎「覚えてる?スカラシップのこと」 八幡「ああ」 川崎「よかった………。 あんたさ、あんとき私と大志と……あとみんなをマクドに集めて話し合わせたよね、しかも午前の5時に」 八幡「そんなこともあったな」 川崎「アタシにスカラシップのこと教えてくれるだけでも十分問題解決になっただろうに、それをあんな面倒くさいやり方でさ……. 98 ID:A3Fv7f6T0 川崎「アタシさ、待ってるから」 川崎「アンタが、アタシたちのところに戻ってくるのを」 八幡「………戻っていいのか?」 雪ノ下「何を言っているの」 雪ノ下「もともとここはあなたの居場所よ」 雪ノ下「だけれど、あなたはそれが見えてなかった」 雪ノ下「それだけの、話なのよ」 八幡「……………俺は」 八幡「…………………俺はっ」 警備員「時間だ」 警備員「面会者は、全員外へ」 八幡「ッ」 雪ノ下「………その続きは、出たときにお願いするわ」 雪ノ下「面会にはまた来るわ。 さよなら比企谷くん」 材木座「えっ?ちょ、我!我まだ何も言ってない!」 戸塚「八幡!またたくさんお喋りしようね!」 結衣「ヒッキー、絶対この病気治して、今度は1人で、来るからね」 大志「悪いっすが小町はもう俺の物っす!それだけは譲らないっすよ!」 小町「やだもう、大志くんたら…」 川崎「こいつら……」 三浦「はー、疲れた疲れた。 40 ID:A3Fv7f6T0 警備員「………結局、先輩はそっちを選ぶんですね」 八幡「—————!? 37 ID:A3Fv7f6T0 八幡「たぶんさ、俺もお前も、大きな勘違いをしてたんだと思うんだ」 一色「……は?勘違い?」 八幡「居場所なんてさ……作る必要なかったんだよ。 俺も、お前も」 一色「何いってんですか……居場所がなかったから作ったんじゃ……」 八幡「違う。 居場所がなかったんじゃない。 43 ID:A3Fv7f6T0 八幡「…………一色」 一色「……先輩にとって、わたしたちは所詮雪ノ下さんたちの代わりだったんですよね」 八幡「………違う」 一色「それならそれでもいいんです。 45 ID:A3Fv7f6T0 一色「…………………」 一色「なんですかそれ、口説いてるんですか?」 八幡「ああ」 一色「自己満足より身勝手じゃないですか……自分の好きな居場所を作るために、お前らの居場所を壊せと」 八幡「わかってる」 八幡「でも、俺はどちらかを選ぶなんてできない」 八幡「両方だ。 どっちも欲しい。 45 ID:A3Fv7f6T0 八幡 ………これが、俺の選択 八幡 一昔前の俺ならば、絶対に取らなかったであろう、最も愚かな選択 八幡 これを成長と呼ぶか、堕落と呼ぶかは人それぞれだろう 八幡 それでも、これは未来へ繋がる第1歩になるのは間違いない 八幡 怯え続けて、過去に囚われて、前に進めない弱い自分は、捨てた 八幡 これまでたくさん間違えてきたし、これからもたくさん間違えるかもしれない 八幡 だけど、俺はもう逃げない 八幡 ずたぼろになるまでぶつかって、足掻いて、そして…… 八幡 俺は、もう一度"本物"を手に入れる end.

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