小川糸 母。 小川糸 母を「初めていとおしく思えた」とき (1/4):日経ARIA

針と糸

小川糸 母

母親にがんが見つかったことを機に、「あまりうまくいってなかった」母と数年ぶりに電話で話したという作家の小川糸さん。 「死ぬのが怖い」とおびえる母と接しながら、読んだ人が少しでも死ぬのが怖くなくなるような物語をと、新刊『ライオンのおやつ』を執筆しました。 そんな小川さんにインタビュー。 上編では、母の死に寄り添った経験を軸に、子どもの頃からの親子関係などを聞きました。 この作品を書くきっかけとなったのが、ご自身のお母様が向き合った死、その死に一緒に寄り添った経験だったとか。 小川糸さん(以下、敬称略) そうなんです。 私は幼い頃から母とうまくいっていなくて、大人になってからも距離を置いて付き合ってきました。 お互いのために連絡もほとんど取らない時期もありましたが、数年ぶりにかかってきた電話で母が病に侵されていること、そして「余命1年」と告げられたことを知りました。 意外だったのは、あれだけ高圧的で私にとって強い存在であり続けようとした母が、命の期限を告げられ、弱々しく死に怯えていたこと。 私自身は、「誰でもいつかは死ぬのだから」と冷静に受け止めるタイプなのですが、「死を恐怖として捉える人はやっぱり多いんだな」と実感がわきました。 今はお年寄りと同居する世帯は減っていますし、病院で死を迎えることが多くなって、あまりにも「死」が日常と離れていて見えづらいから、「得体の知れないもの」と特別扱いしてしまうのかもしれません。 でも、人の数だけ死はあるわけで、人生をどう終えるかは誰にとっても大切なテーマであるはず。 母と同じように不安を抱く人たちに向けて、 読んだ人が死ぬのが怖くなくなる物語を書きたいなと思ったのが、執筆の出発点でした。 それに、私自身も母の死に寄り添う中で、その思いを深めることができたんです。

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小川糸 母を「初めていとおしく思えた」とき (4/4):日経ARIA

小川糸 母

「おやつって、生きるために必要なものではないですよね。 でもそれがある人生と、それがない人生では、豊かさや味わいが変わってしまうような気がします。 それに「おやつ」にイヤな記憶がある人ってあまりいないですよね」 ちなみに小川さん自身の「最後のおやつ」は「おばあちゃんのホットケーキ」。 「私が幼いころのおやつは、乾燥したお餅で作ったあられとか、ちょっと古くなったおまんじゅうの天ぷらとか、祖母の用意してくれていたものでした。 今であればそれも悪くはないけれど、当時はすごく地味な気がして(笑)、「友達の家ではお母さんがケーキを作ってくれてるのに」と文句を言いました。 そうしたら次の日、家に帰ったら違う匂いが漂っていて、祖母がストーブの上のフライパンでホットケーキを焼いてくれていたんです」 距離を置いていた母親からの電話 最新作『ライオンのおやつ』には、そんなおいしそうな「最後のおやつ」がたくさん出てきます。 ホスピスを舞台にしたこの小説を、小川さんが書き始めたのは3年前。 きっかけはお母様がガンで余命1年と宣告されたことでした。 「どんな母と娘にも大なり小なり問題があると思いますが、うちの場合は本当に巨大なものがあって。 子供のころから価値観が合わず、大人になってからも母を受け入れ理解することが難しくて、距離を置いている時期もありました。 その母が余命宣告されて電話をかけてきたんですーー『死ぬのが怖い』って。 それならば死が怖くなくなるような物語を書こうと」。

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小川糸 母を「初めていとおしく思えた」とき (1/4):日経ARIA

小川糸 母

誰かのことを思い、思いやり、そして手紙を書く。 そんなこともめっきり少なくなった今の時代。 でも、伝えたいことがある、思いを伝えたい人がいる、そんな人たちの思いを筆に乗せて伝えてくれる人がいる。 『他の人に代わって文書を書くこと』それが代書。 そして、それを家業とする雨宮家の店主・鳩子の物語が帰ってきた。 絶品の「ツバキ文具店」の続編であるこの作品。 書名が「続・ツバキ文具店」でも、「ツバキ文具店II」でもないので、書名だけでは続編とはわかりません。 また、続編と銘打っていても実はスピンオフ的作品の場合もあります。 でも、この作品は大丈夫。 文具店もそのまんま、登場人物もそのまんま、そして作品のクオリティも極上そのまんまという、もう待っていましたとばかりの最高の形で、あの「ツバキ文具店」のその後の物語が描かれていきます。 『人生には、めまぐるしく変わる瞬間がある。 ミツローさんが私をおんぶしてから一年も経たず、私達は入籍した』と唐突に始まるこの作品。 『今日から私は、雨宮鳩子ではなく、守景鳩子になった』と、「ツバキ文具店」の店主・鳩子が結婚したところから物語はスタートします。 そして『QPちゃんは今日、小学校に入学した。 私も今日から、「お母さん」一年生だ』と、いきなりお母さんにもなった鳩子。 『QPちゃんとミツローさんのチームに自分も仲間入りできたようで、嬉しくもあり、照れ臭くもある』という感想に微笑ましくなるのは「ツバキ文具店」を愛する我々読者。 『新生モリカゲ家の誕生日なのだ。 大人はスパークリングワインで、QPちゃんは、季節のフルーツたっぷりのスカッシュで乾杯する』という幸せいっぱいの食卓。 『QPちゃん、小学校入学、おめでとう。 おとうさん、ポッポちゃん、けっこん、おめでとう』という掛け声の次に『みんな、おめでとう!』と思わず読者視点から声かけしたくなる最高の船出で作品はスタートします。 様々な代書の依頼をこなしていく鳩子。 でもなんといっても鳩子が結婚したことが一大ニュースです。 早速、結婚のお知らせを出すことを考えます『QPちゃんは器用に紙を折り始めた。 完成したのは、紙飛行機だ』と、この瞬間に閃いた鳩子。 『紙飛行機に結婚のお知らせを印刷して、紙飛行機ごと送ってしまおう』というアイディアに『私はひとりで興奮する』鳩子。 『このはる わたしたちは かぞくに なりました ちいさな ふねにのり 3にんで うみへ…』 と最近入手した活版印刷の活字を使って『紙飛行機を広げた時、ちょうどいい位置にくるよう分散させて』文字を印字していきます。 そして、『しっかりとインクが乾いたら、折り紙の要領で紙飛行機を作る』と進めていく鳩子。 『歌川広重の東海道五十三次シリーズ』の切手を貼って投函し、『相手先の郵便受けまで紙飛行機が飛んでいく』とあとは相手に届くのを待ちます。 そして、絶妙なのが、出した手紙のその先を『ポケットから紙飛行機を取り出す。 「これ、見つけちゃった」』というバーバラ婦人が登場し、『乱気流の中を飛んできたのか、翼が少し破けている』という紙飛行機を鳩子に見せて『おめでとう。 幸せになってね』と、祝福されることで紙飛行機が無事に届いたことを描きます。 そもそも紙飛行機型の郵便が出せるという事実を知らなかった私にはそのことを知れただけで興味深々なお話ですが、出した手紙のその先まで続く納得感のある描写にとても幸せな気持ちでいっぱいになりました。 また、小川さんですから『食』も外せません。 この作品にも魅力的なシーンがふんだんに散りばめられています。 その中でも東京みやげで有名な『鳩サブレー』が地味にいい味を出してくれます。 『ポッポちゃーん、おやつ食べよー』というQPちゃんに『鳩サブレー』を出してあげる鳩子。 『鳩サブレーを冷たい牛乳に浸して食べるのが、目下、QPちゃんのお気に入りである』。 えっ?私、そんな食べ方知らなかった!と思っていると、『「ひとくち、くれる?」まるごと一枚は食べられそうにないけれど、ちょっとだけ甘いものが食べたかった』とQPちゃんにお願いする鳩子。 『あーん、と言うので、鳥のひなになった気分で口を大きく開けて待っていると、尾羽の方をひとかけらだけ砕いて口の中に入れてくれた』というシーンの微笑ましさ。 『確かに、鳩サブレーはおいしい。 優しくて、ちゃんと手作りの味がする』とまとめるその先に、『だけど、明治時代に発売された当初は、鳩三郎という名前だったなんて、笑ってしまう。 三郎じゃ、まるで演歌歌手だ』とまとめる小川さん。 たった一枚の『鳩サブレー』にこんな印象的なシーンを、しかもオチまでつけて描くなんて、小川さんの手に掛かるともう全ての食べ物が愛おしく感じてしまいます。 そして、『私はご飯を食べる喜びを知った。 もちろん、それまでだっておいしいものを食べるのは好きだった。 でも、同じ料理でも、ひとりで黙々と食べるのと、好きな人達とわいわいやりながら食べるのとでは、味が違ってくる。 好きな人とおいしいご馳走を囲むことほど、幸せで贅沢な時間はこの世に存在しない』と鳩子が語るように、鳩子ひとりの食の風景が記憶に残る「ツバキ文具店」に比べて、「キラキラ共和国」では、家族が揃って食卓を囲む場面が自然に描かれていたのがとても印象的でした。 また、瑞泉寺へ向かう坂でQPちゃんとヨモギを摘んだ『春』、覚園寺で八月十日に開かれる黒地蔵縁日に三人でそぞろ歩いた『夏』、獅子舞の色鮮やかな葉っぱの絨毯の上に並んで立った『秋』、そして荏柄天神の寒紅梅のピンクの花を親子で愛でた『冬』。 舞台となった鎌倉の魅力と、日本の四季の美しさ、そして守景家の仲睦まじい家族の光景が美しく紡がれていく一年の物語。 この絶妙なバランスが読後の物語の味わい深く残る余韻に大きな役割を果たしていたと思います。 続編ということもあって、作品冒頭から一気に作品世界に没入できる喜び、奥深い代書の世界に触れることのできる歓び、そしてあまりに美しい言葉が紡ぐ作品世界と戯れることのできる悦びに、なんて幸せな読書なんだろう、と恍惚となった至福の時間でした。 「ツバキ文具店」、そして「キラキラ共和国」。 しみじみと、いいなあ、この作品たち。 ただただ、そう感じました。 小川さん、幸せな時間をありがとうございました。 ツバキ文具店の第2弾。 代筆屋の話なのにタイトルすべて食べ物で、美味しそう…。 四季折々の花の描写か、美味しそうな料理の描写か、家族とのふれあいの描写か、心が感じられる手紙の描写か… 素敵なポイントがたくさんあって、どれに焦点をあててもほっこりする。 そこに時たま現れる嵐、レディー・ババ。 男爵の今後も気になる。 次回へ続く、かな。 蓬生団子… 母の日にちなんだ話。 鳩子はミツローさんと結婚し、QPちゃんと家族になった。 夫婦で自営業を営む家族スタイルの始まり。 6歳のQPちゃんとも頑張らずに親子になろうね、と自然に任せることにした鳩子の芯に、凛とした強さを感じる。 結婚報告、人生でそう何度もしない作業なら、代筆屋としてのこだわりを見せようと活版印刷で印字した紙を紙飛行機にして届ける鳩子。 穏やかに始まった3人の生活。 この中でツバキ文具店に盲目の少年が訪れる。 母の日に花と手紙を贈りたいのだという。 お母さんが自分の中のお母さんで良かったと言えるタカヒコ君のファンになった鳩子。 彼自身が手紙を綴れるようサポートすることにした。 母の日にカーネーションを受け取ってもらえず、花屋に返しに行った苦い記憶があった鳩子は、母の日が素敵な日なのだとタカヒコ君により教えられる。 ヨモギ団子をQPちゃんと一緒に作った翌日に入っていたQPちゃんからの手紙。 カーネーションの折り紙と共に添えられたメッセージに、母親として見られていることに嬉しく思いながら仏壇に飾る。 イタリアンジェラート… 突然現れた母を名乗るレディー・ババにショックを受ける鳩子。 あの人が自分の母と知られたら恥ずかしい、嫌われるかもしれない、とレディー・ババのことを頭の片隅において、ミツローの実家の四国へ挨拶に行く守景一同。 鎌倉とは違った空気、大家族の団らんや宴会、そして前の奥さんのこと…。 浮気して家族を省みず事故で死んだ夫からの謝罪の手紙がほしいという女性の依頼 むかごごはん… 初めてミツローと喧嘩する鳩子の巻。 ミツローさんの店の移転と共に、3人で同居することになった守景家。 引っ越しに伴い、前の奥さんの美幸さんの遺品について、前を向くために手放したいミツローと、QPちゃんの事等、大事な記録だと主張する鳩子の意見がぶつかる。 冷静になると、ミツローが判断に迷うなら、皆で納得のいく処分の仕方を考えようとなる。 家族間の手紙って素敵だなぁと思った。 蕗味噌… タイトル読めなかった。 ふきのとう味噌というのか!! 独特の苦味が癖になるらしいけど、タイトルにふさわしく、前半のほっこりに比べて、少し苦い事が起こる。 でも未来の事はどんなことをしてもわからないから、今後悔しないように今の幸せを味わう事が大事なんだと文面から伝わった。 好きか嫌いかと感謝する、しないは別、というミツローさん凄いなー。 今後レディー・ババがどう関わってくるのかわからないけど、次回もでてきそう。 代書屋・文具店よりも、ポッポちゃん本人と、家族になった人たちのほうに焦点を合わせた続編。 幼い子どもを残して亡くなったミツローさんの妻と、どんなふうに向き合えばいいのか・・・正解のない難題だ。 忘れることはないけれど今の生活のおもてには出さないように・・・と考えるミツローさん。 それに対しお墓や仏壇、それになんといってもQPちゃんの存在によって常に前妻/母親を感じているポッポちゃん。 引っ越しのくだりではそれぞれの思いをぶつけ合って落としどころを探っていく。 コミュニケーションと思いやり、ほんと大事。 「私が言っていることも、ミツローさんが言っていることも、根っこの部分では同じなのかもしれない。 」 「どっちが正しいとか間違っているとかではなくて、おあいこだ。 」 「やすなりさん」の彼女は、手紙を受け取ってどんな気持ちになっただろうか。 三行半とその返事の応酬は、どうなっただろうか。 どんなひとにも、キラキラを感じられる瞬間があったら、いいなぁ。 ツバキ文具店を読んでから 一年以上が経過しました。 この二作目を読み始めてすぐに ほとんどの設定も物語も 忘れてしまっている自分に うろたえてしまいました。 「もう一度読み直さなくては…」と落胆しつつ しばらく読み進めていると 鳩子たちの振る舞いや言葉のかけらが 私の中にどんどん入ってきて 「ああ!そうだった!」 「そうそう!そんなことあったあった!」と 心の奥の記憶をどんどん呼び起こしてくれるのです。 気づけば一作目に戻ることなく すべてを懐かしく思い起こしながら 新しい光と風を眉間のあたりに感じつつ 心やわらかに読み終えていました。 鳩子が代書した手紙…そう、手紙って こんなものではありませんでしたか。 久しぶりにファンタジー以外で 五つ星をつけたのではないかと思います。 続いてほしいですね。 二階堂カレーを食べにくるお客さんたちにも 次の機会にはお会いしたいな。 「ツバキ文具店」「キラキラ共和国」を続けて読みました。 ツバキ文具店を読み終えた時は、キラキラ共和国を読むのが楽しみでワクワクしましたが、キラキラ共和国を読み終えた時は、旅が終わったかのような気分になり、まだまだこの舞台の中に居たかったなと、少し淋しくなりました。 それほどいつまでも読んでいたい本です。 代書依頼にやってくる依頼人のエピソード、主人公ポッポちゃんとのやりとり、ポッポちゃんの奮闘ぶりがとても面白く、時に感動的でホロッときます。 また、まわりの登場人物たちと絆を深めていくのですが、みな個性が豊かで、その絡みが本当に面白く、まるで自分もこの物語の輪の中にいる感じがしました。 今度鎌倉の街をゆっくり歩き、カフェで読書をしたいなと思いました。 また、LINEなどがコミュニケーション手段の主流となっている今の時代、手紙で思いを伝えるのもとても大切だと気付かされました。 しばらく会っていない友達に、手紙を書いてみようと思います。

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